パイプ人形のご紹介

2019.06.05

 

エルツ地方産の代表的なおもちゃについて、過去の学芸員コラムでは、くるみ割り人形クリスマスピラミッドについてご紹介してきましたが、今回は「パイプ人形」についてお話します。


パイプ人形とは、中に火のついたお香を入れると、口から煙が出るという仕組みのおもちゃです。
昨今、喫煙については厳粛傾向にありますが、パイプ人形の中身はお香なので安心!時々匂いを変えて楽しめます。

彼らの由来は明確にはわかっていませんが、19世紀にイギリスの喫煙文化がドイツに伝わってきたことがきっかけになっているといわれています。
人形たちは医者、教師、郵便屋、夜警、木こり、サンタクロースなど、様々な姿をしているのが非常にユニークです。


また、吸っているパイプの形にもそれぞれ違いがあります。
こちらはシーシャ(水タバコ)と見られる、長いホースと壺を手に持っています。


この「森林官(Förster)」が吸っている長いタイプのパイプは、チロリアンパイプ(ジャーマンパイプ)と見られます。
森深いドイツ南部で作れられたパイプで、たばこの火が飛んで山火事にならないよう、ボウル(パイプの器部分)が深くなっていて、座ったまま吸えるように柄が長いのは特徴だそうです。
また、持ち運びしやすいよう首から下げる紐がついているタイプもあります。

このように、人形を通してそのモデルになった職業の人々の暮らしや文化の一部が見えてきます。
パイプ人形は、地域の伝統や歴史を反映した存在でもあるのかもしれません。

ムーゼの森 学芸員 中須賀