2020.04.30
3月よりエルツおもちゃ博物館・軽井沢では春の企画展「物語を紡ぐドイツのおもちゃ」が始まりました。現在臨時休館に入っておりますが、ご自宅で本展をお楽しみいただけたら幸いです!
(左から)展示館内、グリム童話「ブレーメンの音楽隊」のおもちゃ、鉱山のお祭りのおもちゃ
今回は物語を伝えるおもちゃということで、ドイツを代表する昔話である「グリム童話」や伝説、文化を伝えるおもちゃを中心に展示しています。
おもちゃが物語の一場面を表現することによって、それを与えられた子どもに物語が根付くんですね。(関連記事はこちら)
本展の案内チラシを飾るのは、こちらのマッチ箱おもちゃ! マッチ箱おもちゃについてはこちらで詳しくご紹介しています。
今回紹介するのは「ノアの方舟」というおもちゃです。エルツ地方のおもちゃで最初のヒット商品と言われています。
キリスト教が主に信仰されている国ではお馴染みの伝承ですが、ノアが神の洗礼を受けて、動物たちと一緒に方舟に乗り大洪水から逃れるおはなしです。
当時信心深い地域では、遊べるおもちゃが制限されていたため、数少ない容認されたおもちゃでもありました。
(左から)ライフェンドレーエンに使用するろくろ、輪切りした木、その様子を表現したマッチ箱おもちゃ
このおもちゃの発明を支えたのが「ライフェンドレーエン」という技術!木材を輪切りにしてろくろにセットし、水車の力で回転させながら刃物で溝や刻み目を入れていきます。そうしてできたドーナツ型の輪型を垂直に切り分けると、金太郎飴のように動物の形がたくさんできあがります!こうして動物のミニチュアを大量生産することができるのです。
「ノアの方舟」はその後、『くるみ割り人形と哀れなラインホルト』など、ドイツで有名な絵本やおはなしの中で、ヨーロッパの子どもの遊びの象徴として描かれたことで、さらに人気が広がり、おもちゃとしての評価が定着していきました。
物語を描いたおもちゃが、絵本の中で描かれて、その物語が根付いていく。物語を紡ぐもの同士、おもちゃと絵本の関係性が見えてきますね。
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学芸員 中須賀