軽井沢絵本の森美術館 秋冬展「『グリム童話』の裏話」開催中!

2020.10.22

 10月9日より、軽井沢絵本の森美術館第2展示館で、秋冬展「『グリム童話』の裏話」を開催しております!

▲ アーサー・ラッカム画「赤ずきん」『Fairy Tales of Brother’s Grimm』1909年/Doubleday,Page&Co 刊

 『グリム童話』は、グリム兄弟(ヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリム)が、民間の間で口伝えで伝わってきたお話(昔話)を集め、編纂したものです。
 本展では、グリム兄弟が『グリム童話』に込めた意図や、『グリム童話』に反映されているグリム兄弟の価値観などを、様々なエピソードを交えながら、ご紹介しています。

 
 グリム兄弟は昔話を集めるとき、語り手から聞き取ったまま忠実に書き留める、ということを重視しました。そのため、1812年と1815年に刊行された『グリム童話(正式なタイトル:子どもと家庭のメルヒェン)』第1巻、第2巻は、子ども向けとは言い難いものでした。挿絵もなく、1つ1つの話に注釈がついている、どちらかと言えば研究者向け、といった風でした。

 1815年以降、主にヴィルヘルムが『グリム童話』の改訂を担当するようになりました。詩人肌のヴィルヘルムは、お話に文学的な表現を与えました。また、残酷な表現を和らげたりもしました。その点で、ヴィルヘルムよりも忠実さを重んじていたヤーコプとは、意向を違えたようです。グリム兄弟は様々な苦楽を共にし、仲の良い兄弟でしたが、昔話に関しては、少しやり方の違いがあったようです。

 
 しかし、ヤーコプは聞き取った昔話が美化されすぎないように戒めることはありましたが、『グリム童話』の改訂はヴィルヘルムに任せました。後に、自分たちの名が広く知られるようになったのは、この本のおかげ、とヴィルヘルムの仕事を認めています。

 また、ヴィルヘルムが亡くなった後に行った講演では、この本について「手に取るたび、深く心を動かされる。どのページにも、弟のおもかげが感じられる」というような言葉を残しています。

 このように、厳格なヤーコプと詩人肌のヴィルヘルムの2人に育まれ、今日多くの人々に親しまれる『グリム童話』が生まれたのでしょう。こうした『グリム童話』の裏話を紹介している今回の企画展、お楽しみいただければ幸いです。

また、同時開催として「シャルル・ペロー」についての紹介もしております!

 
 シャルル・ペローはグリム兄弟以前に活躍しました。フランスの宮廷官僚であった彼は、主に貴族のお嬢様方に向けてお話を書いていました。その中には、「赤ずきん」や「シンデレラ」など、『グリム童話』にも収められているお話もありますが……よーく読むと、内容が異なっているのです!

 シャルル・ペローのお話とグリム童話の違い、なぜそのような違いがあるのか、皆さんが読んでいたお話は、果たしてどちらのお話だったのか?ぜひ、本展で確かめてみてください!


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学芸員 畑中