木葉井悦子のアトリエ~夏の展示~

2021.06.05

軽井沢絵本の森美術館 第1展示館にある「木葉井悦子のアトリエ」の展示替を行いました!
今回は、『みずまき』という作品を展示しています!

▲『みずまき』(木葉井悦子、1994年、講談社)

ある、とても暑い夏の日。生きものたちも、庭でお昼寝しています。
そこへ女の子がやってきて「にわのみなさん あめだぞ あめだぞ」とホースで水をまきはじめます。

『みずまき』は、ページをめくるのがとても楽しい作品です。というのも、『みずまき』の特徴である「繰り返し」と「落ち」が、読者をわくわくさせるリズムを生み出しているのです!

まず、女の子が「あめだぞ あめだぞ」と庭に水をまきます。すると「こち こち こち こち」「しゃく しゃく しゃく しゃく」。生きものたちのたてる音が聞こえてきます。それと一緒に生きものたちが何をしているのかを教えてくれます。「そうなんだ!」と思い次のページをめくると、「と おもったら 〇〇でした」という「落ち」が待っています。
また、生きものたちの場面で用いられている「こち こち こち こち」などのオノマトペ(擬態語)も特徴的です。「キバイ語」とも言えるようなこれらのオノマトペは、思わず声に出して言いたくなるような響きを持っています。
「繰り返し」と「落ち」、「キバイ語」といった要素が、絵本を生き生きとして楽しいものにしています。

『みずまき』が出版されたのは、1994年。木葉井の亡くなる前年です。木葉井は晩年、病と闘っていました。酷い腰痛のために、動けないこともあったといいます。しかし、木葉井はそんな中でも、絵を描こうとしました。病と闘うその苦しさをも、絵を描く力に変えようとしたのです。
『みずまき』で、女の子のホースからほとばしる水、うるおっていく生きものや自然。絵から、瑞々しい生命力があふれています。

木葉井の絵を描くことへの強い思い、そして『みずまき』という絵本の持つ楽しさを、感じていただけたら幸いです。
また、ケース内では木葉井の晩年(1992-1995年)の作品をご紹介しています!気になる作品がありましたら、閲覧本コーナーから探して読んでみていただけたらと思います!


ムーゼの森(過去の学芸コラム一覧に飛べます)
学芸員 畑中