森の家に「軽井沢と児童文学」新設

2019.08.06

軽井沢絵本の森美術館の「森の家」に新設コーナー「軽井沢と児童文学」ができました!

『風立ちぬ』で有名な堀辰雄をはじめ、有島武郎、芥川龍之介、室生犀星など、軽井沢はたくさんの作家たちに愛されてきた土地でもあります。
そして彼らの中には、児童文学作品を書いた方も多くいるのです。

当館は絵本以外にも、児童文学作品の展示・収蔵をしています。このことから「軽井沢という土地柄を生かし、彼らの児童文学作品を紹介しよう!」と、このコーナーが開設されました。

第1回目に取り上げるのは「鈴木三重吉」です。児童文学雑誌『赤い鳥』の主宰者として、名前を聞いたことあるという方は多いのではないでしょうか。
まさに児童文学作品を取り上げるにはうってつけの人物!晴れて第1回目を飾っていただくことになりました。

彼は大正8年に起きた「偽三重吉事件」という事件をきっかけに、軽井沢を訪れるようになったと言われています。
大正10年には北原白秋や島崎藤村らと共に、「芸術自由教育夏季講習会」を高原教会で開催するなど、その後も数度来軽したようです。この講習会の参加者には『赤い鳥』の執筆陣も多くいたため、この雑誌自体が軽井沢と縁遠いものではないのかもしれません。

三重吉の考え方の根幹は“児童文学の質を高めること”でした。
『赤い鳥』のモットーには「現代第一流の芸術家の真摯なる努力を集め、子供のための若き創作家の出現を迎ふる、一大区画的運動」とあります。芥川龍之介「蜘蛛の糸」や、有島武郎「一房の葡萄」など、そうそうたる面々の作品が掲載されたのは、この意図の表れといえます。また「ごんぎつね」の新見南吉もここから見出されたことも、この雑誌の功績の一つです。
(本展では、このモットーに賛同した作家たちの中でも、軽井沢とゆかりある人物を主にご紹介しています)

また、彼の児童文学の構想には“西洋の童話のようなファンタジックさや詩情を子供たちに伝える”ことがありました。
そこから生まれた彼の児童文学処女作『湖水の女』は、外国の童話を再話したものなのです。
また、『古事記物語』は初めて物語全編が子供向けに再話されたもので、この伝説が子供たちにも浸透しやすくなりました。
この2冊と『鈴木三重吉童話集』は、展示解説を見ながらお手にとってお読みいただくことができます。

本コーナーを通して、児童文学の深み、軽井沢と文学のかかわりを知っていただけたら幸いです。
第2回目(10/26~1/13)は、先にもふれました「北原白秋」をご紹介します。

ムーゼの森 学芸員 中須賀