軽井沢絵本の森美術館 2023年夏展「童話のなかのアンデルセン」開催中!

2023.07.07

6月23日(金)より、軽井沢絵本の森美術館2023年夏展「童話のなかのアンデルセン」がスタートしました!

▲北見葉胡 画「おやゆびひめ」©2007 Yoko Kitami

アンデルセン童話には、アンデルセンの幼少期や旅の記憶などが散りばめられています。本展では童話1つ1つに、あらすじと関連するアンデルセンのエピソードを添えています。童話のなかに、アンデルセンの人生を感じていただけたら幸いです。
それでは、本展で展示している作品の一部をご紹介します!

・ 「おやゆびひめ」

▲W.H.ロビンソン『親指ひめ/ Hans Andersen’s Fairy Tales 』1913年

ある女の人が、子どもがほしいと願っていました。そこで、魔女のところに相談に行きます。魔女は「大麦のつぶ」をくれました。女の人は、つぶを植木鉢にまきました。すると、きれいな花が咲きました。その花のなかに、かわいらしい女の子が座っていました。

生涯家を持たなかったアンデルセンは、知人・友人の家に宿泊することも多くありました。そのようなとき、その家庭の子どもたちにお話を語る機会もあったようです。
そのうち、アンデルセンはもっと子どもたちを喜ばせたい、と思うようになります。そして、自分がお話を語る口調を文字にして残すことを思いつきます。これが、童話を書くきっかけになりました。そして「おやゆびひめ」は、アンデルセンの語り口が、最もよく表れているお話とされています。

本展では画家・絵本作家の北見葉胡(きたみ ようこ)氏の『おやゆびひめ』(蜂飼耳 訳、2007年、偕成社)原画も展示しています!

▲北見葉胡画『おやゆびひめ』 (蜂飼耳 訳、2007年、偕成社) の原画を展示しているスペース

北見氏は、神奈川県出身の画家・絵本作家です。現在は、主に個展・絵本・装画でご活躍されています。北見氏の描く「おやゆびひめ」の世界も、じっくりご堪能いただけたら幸いです!

・ 「雪の女王」

▲カイ・ニールセン 画『雪の女王/ Fairy Tales by Hans Andersen 』1924年

あるところに、カイという少年とゲルダという少女がいました。ある日、カイの目と心臓に悪魔の鏡の欠片が刺さり、冷たい心を持つようになってしまいます。そして、雪の女王の宮殿に連れ去られてしまいました。ゲルダは、カイを探す旅にでます。

「雪の女王」は、全7章からなる長編童話です。このお話の中には、アンデルセンの両親に関する記憶が表れている部分があります。例えば、第2章でふれられている、雨樋(あまどい)に作られた菜園などです。アンデルセンの母も、雨樋で野菜を育てていたといいます。

・ 「人魚姫」

▲ハリー・クラーク 画『人魚姫/ Fairy Tales by Hans Christian Andersen』1916年

15歳になった人魚姫は、海の上の人間の世界を見に行きます。水の上に顔を出すと、1艘の船を見つけます。中をのぞくと、うつくしい王子さまがいました。しかし嵐によって、王子さまは海に落ちてしまいます。人魚姫は王子さまを助けます。海に戻ってからも、人魚姫は王子さまのことが忘れられず、海の魔女のもとへと行きます。

このお話には、ルーイサ・コリンへの恋が表れているとする説があります。ルーイサ・コリンは、アンデルセンの後援者であったヨナス・コリンの娘です。しかし、ルーイサには婚約者がいましたし、上流階級に属していました。アンデルセンとは、身分が違ったのです。
海底という下の世界から、上の世界である人間の世界に焦がれる人魚姫には、ルーイサを慕ったアンデルセン自身の姿が反映されているのかもしれません。

ここまで紹介してきたように、アンデルセン童話は、アンデルセンの人生を知ることでより理解を深めることが出来ます。企画展では、このほかにもたくさんのアンデルセン童話をご紹介しています!そして、童話の理解を深めていただけるように、関連するエピソードも記載しています。ぜひ、アンデルセン童話のなかに漂うアンデルセンの人生を感じていただけたらと思います!

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学芸員 畑中