エルツおもちゃ博物館・軽井沢 くるみわり人形って?②~「くるみわり人形の歴史」~

2023.12.02

現在、エルツおもちゃ博物館で開催中の秋冬展「くるみわり人形とクリスマス」に合わせて、くるみわり人形の魅力をお伝えするコラム第2弾!(第1弾はこちら
今回は、くるみわり人形の歴史についてご紹介します。くるみわり人形には一体どんな歴史があるのか?一緒に見ていきましょう!

・くるみわり人形の前身!?「くるみわり器」

くるみわり人形がいつ登場したのか、正確な時期はわかっていません。しかし、その前身ともいえる「くるみわり器」がヨーロッパ各地で作られていました。紀元前4世紀から3世紀頃には、ペンチのような形をした鉄製のくるみわり器が使われていたようです。15世紀から16世紀にはフランスやイングランド、18世紀から19世紀にはオーストリアやスイスの彫刻家たちによって、人や動物を象ったくるみわり器が作られるようになっていきます。

    ▲くるみわり器

写真は当館で展示している「くるみわり器」です。どこの国でいつ作られたのかは不明ですが、ヨーロッパ各地で作られたものと類似しています。現在販売されているくるみわり人形と比べると、とてもシンプルなデザインになっています。

▲くるみわり人形とくるみわり器

くるみわり人形と並べてみると、顔がリアルで少し怖いかもしれません。このコラムを読んでいる皆さんは、どちらの顔がお好きでしょうか?

・くるみわり人形、ドイツに現る!

  ▲兵隊のくるみわり人形
  ▲王さまのくるみわり人形

写真は、兵隊、王さまをモチーフにしたくるみわり人形です。兵隊や王さまの姿をしたくるみわり人形は、1800年頃にドイツのゾンネベルクやエルツ地方で作られていたという記録があります。

エルツ地方では、1870年代におもちゃの町として名高いザイフェンで最初のくるみわり人形が制作されました。制作したのは、ヴィルヘルム・フリードリヒ・フュヒトナー(Wilhelm Friedrich Füchtner)で「くるみわり人形の父」とも呼ばれています。

▲フュヒトナー工房のくるみわり人形

フュヒトナー工房は、おもちゃの町ザイフェンにある工房です。初代ヴィルヘルム・フリードリヒ・フュヒトナーから始まり、現在は8代目が運営をしている、伝統ある工房です。
フュヒトナー家は、もともと大工の家系でした。夏は工事をして生計をたてていましたが、雪深い冬は仕事ができなかったため、別の仕事をする必要がありました。そこで、木のおもちゃ作りに着手するようになったのです。

フュヒトナー工房の中でも特に有名な商品は、やはり「くるみわり人形」!一体、どのように作っているのでしょうか?

▲木のおもちゃ作りに使われる「ろくろ」

まず「ろくろ」という機械に、一本の木をセットします。これを高速で回転させながら、ノミなどの道具で削っていきます。

▲1本の木から作られた頭・胴体のパーツ(写真右)

そして、この1本の木から頭・胴体の部分ができます!これに帽子や鼻、足などのパーツをつけると、くるみわり人形の完成です!

▲フュヒトナー工房のくるみわり人形(完成品)

愛嬌のある、やさしい顔立ちです。工房のHPでは、くるみわり人形と旅をしている写真なども見ることができます。ドイツ語ですが、翻訳機能などを使って、ぜひチェックしてみてください!フュヒトナー工房のHPはこちら

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学芸員 畑中