エルツおもちゃ博物館・軽井沢「ヨーロッパのおもちゃ工房」開催中!

2024.03.23

エルツおもちゃ博物館はその名の通り、ドイツ・エルツ地方のおもちゃを展示していますが、じつはヨーロッパ各地のおもちゃや工芸品も収蔵しています!
そしてこのたび3月9日より始まった企画展「ヨーロッパのおもちゃ工房」では、「エルツ地方」のおもちゃに加え、「知育玩具」「北欧」の3つに分けて、ヨーロッパのおもちゃや工芸品をお見せする内容となっています。
今回のコラムでは、3つの区分に分けた展示品の中から、いくつかピックアップしてご紹介します!

〇エルツ地方のおもちゃ
エルツ地方にはさまざまなおもちゃ工房がありますが、その中でも最も長い歴史を持つ工房が「クヌース・ノイバー(Knuth Neuber)」です。なんと1892年創設!エルツの代表的なおもちゃ「シュヴィップボーゲン」「クリスマス・ピラミッド」など、幅広く作られています。

企画展の1番最初に見える「はじめに」のケースには、クヌース・ノイバー製のシュヴィップボーゲンがあります。こちらはエルツ地方がおもちゃ産業で発展する前に主産業であった鉱山業で働く人(鉱夫)と、「ボビンレース」を編む人がモチーフになっています。

そして、クヌース・ノイバー製のおもちゃで、最もユニークなのがこのクリスマス・ピラミッドです。クリスマス・ピラミッドは、燭台のろうそくに火をつけてプロペラを回すおもちゃとなっていますが、こちらではプロペラとともにトナカイとサンタクロースが回る仕様になっています。まるでサンタを乗せたトナカイが、空を飛んでいるかのように見えるのです!

〇知育玩具
知育玩具において基礎となるのが、ドイツの教育学者フリードリヒ・フレーベルと、ルドルフ・シュタイナーの教育思想です。

フレーベルは、子どもが遊びながら学べるおもちゃ「恩物(Gabe)」を提案しました。恩物は、まる・さんかく・しかくの基本的な形から成り立っているおもちゃであり、点・線・面・立体といった概念を学ぶことができます。そして恩物は第一恩物~第十恩物まであり、子どもの成長段階に応じるようになっているのです!
 
シュタイナー教育を基礎として知育玩具を作っているのが、グリムス社(Grimm’s Spiel und Holz Desgin)です。シュタイナーは「自然素材で作られている、なるべく仕組みが単純であるおもちゃ」を推奨しました。これをもとに、グリムス社では、天然の木材と赤ちゃんが口に入れても安全な塗料とオイルを使っています。
当館のおもちゃコーナーでもさわってあそべる「虹色トンネル」は、グリムス社の代表的なおもちゃの一つです!

〇北欧のおもちゃ

北欧のおもちゃや工芸品によく見られるのが、この赤いぼうしをかぶった妖精の姿です。この妖精は「ニッセ」「トムテ」「トントゥ」と呼ばれ、北欧のシンボルでもあります。

このほかにも、フィンランドの工芸品「ダーラナホース」や「ユールボック」、古代ヨーロッパに北欧沿岸で活動していた海賊「ヴァイキング」をかたどったミニチュアなど、北欧のおもちゃや工芸品のモチーフには、地域に伝わる存在が見られます。

また、北欧の工芸品は木工だけでなく、ガラス製品などもよく知られています。その工房の一つがホルムガードです。 機能性、デザイン性を兼ね備えた高品質なガラス製品は、デンマーク王室でも愛用されています。

おもちゃを見ていくと、その奥にこめられた考え方や地域の伝統、工房ごとのデザインや個性の両面を楽しむことができます。ぜひ、本展でさまざまなヨーロッパのおもちゃをお楽しみください!

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学芸員 中須賀