軽井沢絵本の森美術館開館30周年 春展「『グリム童話』のメルヒェン旅行記」のご紹介

2020.04.10


▲アーサー・ラッカム画『Arthur Rackham’s Book of Pictures アーサー・ラッカム画集』1913年

3月より軽井沢絵本の森美術館では春の企画展「『グリム童話』のメルヒェン旅行記」が始まりました。現在臨時休館に入っておりますが、今後はご自宅でも本展の一部をお楽しみいただけるよう、 学芸コラム等の発信コンテンツを充実してまいります。

〇『グリム童話』と挿絵の関係のはじまり

グリム童話の成り立ちについてはこちらの記事でもご紹介していますが、 本展は同作を挿絵の観点から掘り下げていく内容となっています。

1812年、 グリム兄弟(なんと9人兄弟!) の長男ヤーコプ・次男ヴィルヘルムが初めて出版した『グリム童話(正式なタイトルは「子どもと家庭のメルヒェン」)』は、文章だけの本でした。
その後に5男であるエーミール・グリムが2枚の挿絵をつけて、 初めてグリム童話と挿絵の関係が始まったのです。


▲ジョージ・クルックシャンク画「ブレーメンの音楽隊」『German Popular Stories ドイツの有名なおはなし』1823年

その後、イギリスのジョージ・クルックシャンクが挿絵をつけて英語版が出ると、 またたく間にグリム童話が知られていくようになりました。
現代では当たり前のように知られるグリム童話ですが、ここまで広まるためには「挿絵」が重要だったのです!

〇メルヒェンを描いた画家たち
19世紀末にグリム童話の著作権が切れると、より多くの画家がグリム童話を描くようになりました。

ウォルター・クレイン、アーサー・ラッカム、エドマンド・デュラック、カイ・ニールセンなど、現代でも人気を誇る画家たちが登場し、挿絵の黄金期を迎えます。

グリム童話のような昔話は「メルヒェン(märchen)」の仲間です。
「メルヒェン」とは、ロマン派の詩人たちによる自然の美しさや森の静けさをテーマにした作品や作風を指す言葉で、 画家たちは様々なメルヒェンを絵の題材としました。

本展では19世紀末~20世紀初め頃に、様々なメルヒェンを描いた画家たちの作品やエピソードをご紹介します。メルヒェン、そしてグリム童話がどのように表現され、物語が伝えられてきたのか…
物語がどんどん現代の絵本の形へと近づいていくまでの歴史を、時間旅行のような感覚で辿ってみてください。


そして軽井沢絵本の森美術館は今年で開館30周年!
開館最初の企画展がグリム童話展だったこともあり、原点回帰もこめて本年度は通年でグリム童話展を行います。
夏展・秋冬展でもまた違った角度でこの作品を掘り下げますので、『グリム童話』の魅力をご堪能ください。

ムーゼの森(過去の学芸コラム一覧に飛べます)
学芸員 中須賀