2020.10.30
エルツおもちゃ博物館・軽井沢では、秋冬展「天使が歌うクリスマス」を開催しております!
本展では、天使、聖歌隊、生誕などをモチーフとしたおもちゃとともに、ドイツの文化をご紹介しております。その中から、今回はクリスマスマーケットの文化を取り上げてみたいと思います!
ドイツでは、クリスマスの4週間前から待降節(アドヴェント)と呼ばれるクリスマスシーズンがはじまります。この期間中、教会の前の広場で「クリスマスマーケット」が開かれるのです。このクリスマスマーケットでは、たくさんのお店が並びます。
クリスマスマーケットでは、くるみ割り人形などの木のおもちゃ、アドヴェントクランツ(モミの枝で作ったリースに4本のろうそくを立てたもの)、レープクーヘン(小麦粉とハチミツでできたクッキーのようなもの。とても固い。クリスマスツリーに飾ったりする)などの、クリスマスの必需品を購入することもできます。
また、チョコレートやキャンディー、ソーセージ、グリューワインなどの食べ物を販売している屋台もあります。クリスマスを心待ちにする、多くの人がこのクリスマスマーケットに訪れます。大きな街から小さな町まで、各地でクリスマスマーケットが催されるのだそうです。
また、本展ではエルツ地方のおもちゃ作りの歴史を伝えるようなおもちゃも展示しております。例えば、繊細で美しいすずのおもちゃです。
ドイツとチェコの国境付近に位置するエルツ山地(クルスナホリ)では、12世紀頃から、銀やすず が採掘されていました。そして、この周辺の地域では鉱業が発達していくこととなります。おもちゃ作りで有名なザイフェンも鉱業で生計を立てていました。15世紀半ば頃からは、すずの採掘もされていたようです。
しかし、やがて採れる鉱石が少なくなり、鉱業は衰退していきます。人びとの仕事の中心は、鉱業の技術や手先の器用さを活かすことのできる、おもちゃ作りへシフトしていきます。
ニュルンベルクでは、すずを加工して食器を作る職人がいましたが、こちらは磁器の食器が台頭するのと同時に、人気が低迷していきました。そこで、すずを使った人形を作るようになったと いいます。
そして、すずを砕くために使っていた機械からヒントを得て、「ろくろ」で木の動物を作ることを始めます。詳しくは こちら 。
この「ろくろ」で作られた木の動物たちは、人気の作品となりました。すずを採掘していた時期の技術が、おもちゃ作りへとつながっているのです!
エルツ山地(クルスナホリ)の鉱業地域は2019年、世界遺産にも登録されましたが、その歴史はこのようにおもちゃにも反映されています。
当時の村の様子がおもちゃの中に残され、現在まで伝わってきているのです。
本展では、ドイツのクリスマスの聖夜を体感していただくのみならず、おもちゃが持つ歴史や文化を伝える力を感じていただけたら幸いです。
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学芸員 畑中