2022.09.18
軽井沢絵本の森美術館 第1展示館内の「木葉井悦子のアトリエ」の展示替えを行いました!今回展示しているのは、『かさじぞう』(1995年、すずき出版)の原画、計12点です。
あるところに、「笠(かさ。雨などをしのぐために頭にかぶる、ぼうしのようなもの)」を作るのが上手なじいさまと、ばあさまがいました。じいさまは、作った笠を売りにでかけます。その帰り道、おじぞう様たちが雪をかぶり、寒そうにしているのを見つけます。じいさまは持っていた笠と自分の手ぬぐいを、おじそう様にかぶせてあげました。すると、その夜、じいさまとばあさまの元に、おじそう様が贈りものを運んできてくれました。
『かさじぞう』は、織田道代氏の文に、木葉井が絵をつけています。物語はしみじみとした語り口調で進みます。しかし後半のおじぞう様が贈りものを運んできてくれる場面では、「ずるずるぞ~」や「ぺったら どどおん」といった擬音語が、読者を楽しませてくれます。
このような織田道代氏の語りを、木葉井の絵がさらに引き立てています。登場人物たちの動きが想像できるような大胆な構図はもちろん、注目していただきたいのは「色」です。
例えば、「じいさまがおじぞう様に笠をかぶせる場面」と「おじぞう様が贈りものを運んできてくれる場面」です。
「笠をかぶせる場面」では、全体的に青や灰色などの「寒色」が使われています。雪の冷たさや、すっかり冷えてしまっているおじぞう様の温度まで感じられるようです。それとは対照的に、「おじぞう様が贈りものを運んでくる場面」では、赤や橙(だいだい)、黄色などの「暖色」が多く使われています。おじそう様の体も暖色で彩られており、じいさまの優しさがおじぞう様たちを暖めてくれたことが表現されているのかもしれません。
閲覧コーナーには、『かさじぞう』の絵本もございます!ぜひ、原画を鑑賞した後に、お話を読んでみてください。
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学芸員 畑中