エルツおもちゃ博物館・軽井沢 2023年夏展「エルツ地方のミニチュア」②~ザイフェンのミニチュア工房~

2023.08.18

エルツおもちゃ博物館・軽井沢 夏展「エルツ地方のおもちゃ」も、会期が後半となってまいりました。
エルツ地方のおもちゃ工房の多くは、ザイフェンの町を拠点としています。今回はそうしたザイフェンの町を中心に、ミニチュアの工房を紹介します!

・ヴェルナー(Werner)

前回の記事で紹介した「鉱夫のミニチュア」のヴェルナー(Werner)は、代々続くミニチュア工房の家系でもあります。中でも、エルツ地方独自の技術「ライフェンドレーエン」をつかったクリスチャン・ヴェルナー氏(Christian Werner)による「ノアの箱舟」が知られています。

その父であるヴァルター氏(Walter)の代より、ミニチュアのくるみ割り人形の作り手でもあります。くるみ割り人形は、背中にあるレバーを動かしてくるみを割る仕組みになっていますが、この小さなくるみ割り人形たちもちゃんとレバーが動くようになってます!

また、クリスチャン氏の弟であるヴォルフガング氏(Wolfgang)は、箱型・手回し式のオルゴールや、取っ手を動かすと乗馬する人々のミニチュアが動くふりこ式のおもちゃといった、しかけがあるユニークなおもちゃを作っています。

・グンター・フラート(Gunter Flath)

フラート家は、多種多様な木のおもちゃを作るマイスター(職人)を輩出してきた家系です。
中でもグンター・フラートの「ミニチュアルーム」は、日常の風景や、生誕の場面が描かれている小箱です。 11×6×4cm のサイズの 部屋に収められた世界は、小さな芸術品でもあります( 本展のチラシも飾っています!)
また、ザイフェンで最初にミニチュア製造に携わったといわれるのが、グンター氏の祖母であるマリー・フラート氏といわれています。

・グレーサー(Gläßer)

グレーサーは、1904年から続く老舗の工房です。中でも「ザイフェン市場の屋台(Seiffener Marktstände)」シリーズで知られています。

ミニチュアには、自分たちの暮らしを形に残し、客観的に見られる面白さがあります。ザイフェンのマーケットの光景をミニチュアにしたグレーサーの作品は、まさにそうした特徴が表れていますね!
このシリーズは、エルツ地方の職人を対象に行われるコンクールTradition und Form の賞を、2003年に獲得しました。

エルツ地方では、一家でおもちゃのマイスターとなるケースが多く見られます。こうして技術や作品の特徴が受け継がれ、ミニチュアをはじめとする木のおもちゃ歴史がつむがれているのです。

次回のコラムでは、ザイフェン以外のエルツ地方の町や、ドイツ国内にあるミニチュア工房をご紹介します!

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学芸員 中須賀