2024.10.26
10月11日より、エルツおもちゃ博物館2024年秋冬展「クリスマスのおくりもの」が開催中です!
本展では、「クリスマスプレゼント」にぴったりなおもちゃを、多数展示しています。ドイツ・エルツ地方のおもちゃの町、ザイフェンで作られるおもちゃが展示の中心になっていますが、一部、北欧のおもちゃもご紹介しています。今回のコラムでは、ミニチュアの展示を中心に見ていきましょう!
お土産としても人気がある、ザイフェンのミニチュア。今回の企画展では、ドイツの冬の行事やクリスマスを思い起こすようなミニチュアを中心に展示しています。そのなかから「ベッティーナ・フランケ工房」と「ライヒセンリンク工房」のミニチュアをご紹介します!
・ベッティーナ・フランケ工房( Bettina Franke )
ベッティーナ・フランケ工房は、1929年に創業された歴史ある工房で、木彫りのおもちゃを中心に制作しています。素朴な表情のミニチュアからは、木彫りならではのあたたかみを感じられます。また、あざやかな色付けがほどこされているのも特徴の1つです。そんなベッティーナ・フランケ工房のミニチュアを展示しているケースが、こちらです!
まず注目していただきたいのが、緑のぼうしに赤い服の小人たちです。プレゼントを持っていたり本を読んでいたり、思い思いに過ごしています。1体1体の小人から、いろいろなストーリーを想像することができます。そして、洋服のデザインが特徴的な人形もあります。
こちらの人形たちは「Meine Kinder(わたしのかわいい子どもたち)」というシリーズです。1つ1つの人形に、名前がついた札がついています。ぜひ、洋服のデザインや色、札についた名前から、どんな子なのかを考えてみてください!
また、館内にはベッティーナ・フランケ工房のおもちゃ制作風景が見られる動画もございます。合わせてお楽しみください!
・ライヒセンリンク工房( Leichsenring )
ライヒセンリンク工房は、今年で創業120周年を迎える、老舗の工房です。1904年、エミール・ライヒセンリンクが本格的に木工おもちゃ作りを始めました。エミールは自動車のミニチュア制作で事業を軌道にのせます。
そして、エミールのあとを継いだエーリッヒ・ライヒセンリンクは、「生誕」や「イースター」をモチーフにしたミニチュア、そして現在の、工房の看板商品でもある「花」のミニチュアを生みだしました。
現在は、エーリッヒの孫にあたるギッタが工房を引き継ぎ、おもちゃの生産を続けています。本展で展示しているのは、ギッタが制作を始めた「メッテンゲンガー」シリーズです。
メッテンゲンガーとは、クリスマスの夜に礼拝に行く人々のことをいいます。礼拝が終わると、各々がランタンを持って家路につきます。展示してあるミニチュアのなかにも、ランタンを持った人を見つけることができます。
▲ランタンを持っているミニチュアたち
あるとき、ザイフェン木工学校の教師をしていたアルヴィン・ザイフェルトという人物が、このメッテンゲンガーの光景に感銘を受け、ランタンのデザインに取り入れようと考えます。ザイフェルトは、木工学校の生徒たちにデザイン画を描いてもらい、ランタンに貼り付けました。灯りをつけると、その画が照らしだされます。ザイフェルトのアイデアは、ザイフェンの街路灯にも採用されています。
ここまでご紹介してきたミニチュアは、いかがだったでしょうか?小さいミニチュアは、旅行のお土産にも、クリスマスのプレゼントにもぴったりです。ミュージアムショップでも販売していますので、展示を見たあとは、ぜひお立ち寄りください!
【参考文献】
『ドイツ木工芸 美と技を探る エルツ山地地方の木のマイスター達との出会い』(中村一行著、日貿出版社、2024年)
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学芸員 畑中