エルツおもちゃ博物館・軽井沢 2025年春夏展「想いをつたえるミニチュア展~エルツ地方のおもちゃ工房をたどって~」開催中!

2025.03.20

 エルツおもちゃ博物館・軽井沢では、3月8日より、2025年春夏展「想いをつたえるミニチュア展~エルツ地方のおもちゃ工房をたどって~」を開催中です!
 木のおもちゃ作りで有名なドイツ・エルツ地方。そのなかでも「おもちゃの町」として知られる、ザイフェンのミニチュアを中心にご紹介しています。

花屋のミニチュア・イースターラビット/Leichsenring温室/Reutter Porzellan

 今回の学芸コラムでは、展示しているおもちゃの一部をご紹介します!

エルツ地方ザイフェンの歴史

 エルツ地方の「エルツ(Erz)」とは「鉱石」を意味しています。その名のとおり、15~17世紀頃までは、鉱業で栄えていました。

▲鉱業がモチーフのおもちゃ

 しかし、17世紀以降、採掘できる鉱石の量が減少し、鉱業は衰退していきます。鉱業に代わる新しい事業を模索していくなかで、それまで副業的に営まれてきた「木工品作り」を始めることとなりました。

 1699年になると、ヨハン・フリードリヒ・ヒーマンという人が、ザイフェンの木工おもちゃを、商業の中心地・ライプツィヒの見本市に運びました。これにより、「ザイフェン製(Seiffener ware)」という用語が定着していくことになります。このヒーマンさんは、おもちゃのデザインに取り入れられることもあります!

▲ヨハン・フリードリヒ・ヒーマンのおもちゃ
▲おもちゃが持っている台に「Johann Friedrich Hiemann(ヨハン・フリードリヒ・ヒーマン)」の文字

 そして1850年頃になると、エルツ地方で作られるおもちゃで最初のヒット商品である「ノアの方舟」が登場します。

▲ノアの方舟
▲方舟にミニチュアを収納している様子

 「ノアの方舟」は、旧約聖書の『創世記』に伝わるお話です。大洪水が起こるというお告げをきいたノアは、自分の家族と、あらゆる動物をつがいであつめて、方舟に乗ります。
 ノアの方舟のおもちゃには、さまざまな動物のミニチュアを乗せることができます。さらに、方舟の屋根をあけて、動物のミニチュアを収納できるタイプのものもあります。

 しかし、1890年に物の重さに税金がかかる「従量関税」が導入されると、ノアの方舟のような大きなおもちゃの輸出が難しくなってしまいます。そこで人々は、マッチ箱にミニチュアをおさめたおもちゃや、わっぱのなかにしまうことができるおもちゃなど、小さなミニチュア制作をするようになりました。

▲マッチ箱のおもちゃ(手前)、わっぱのおもちゃ(左)、網袋のおもちゃ(右奥)

 ミニチュア制作は、このような歴史のなかではじまりました。ここからは、いくつかの工房のミニチュアをご紹介していきます!

ライヒセンリンク( Leichsenring )

 ライヒセンリンクは1904年に創業した、120年以上の歴史を持つ工房です。春らしい「花」のミニチュアは、工房の看板商品でもあります。
 また、イースターラビットのおもちゃも制作しており、丸いフォルムがかわいらしく、明るい印象を与えてくれます。

▲ライヒセンリンクの展示ケース

ベッティーナ・フランケ(Bettina Franke)

 1929年に設立された、老舗の工房です。素朴な表情とあざやかな色合いが、春にぴったりです。写真は「Meine Kinder(わたしのかわいい子どもたち)」シリーズです。洋服のデザインがかわいらしい人形です。また、1体1体に名前がついており、愛着がわいてきます。

▲「ドーラ(DORA)」という名前の札がついた人形
▲「エマ(EMMA)」という名前の札がついた人形

 この他にも、たくさんのミニチュアがみなさんをお待ちしています。ぜひ、足をお運びください!

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学芸員 畑中