木葉井悦子のアトリエの展示替えを行いました!

2025.04.27

 軽井沢絵本の森美術館・第1展示館無い内にある「木葉井悦子のアトリエ」の展示替えを行いました!今回は『ぼんさいじいさま』(1984年・偕成社、2022年・瑞雲舎)の原画を展示しています。『ぼんさいじいさま』の原画展示は、約3年ぶりになります。前回のコラムはこちら
 また、今回は展示する機会の少なかった裏表紙の原画も展示しています。桜の木の枝が画面いっぱいに描かれ、日本画のような荘厳さが感じられます。ぜひ、実際に目にしていただけましたら幸いです。

▲木葉井悦子のアトリエ内

 たくさんの生き物や、大好きな盆栽(ぼんさい)にかこまれて暮らすぼんさいじいさま。ある日、じいさまのもとに、ひいらぎ少年がやってきます。ひいらぎ少年はじいさまを迎えにきたといい、じいさまはひいらぎ少年についていくことにします。

 ぼんさいじいさまは、盆栽だけでなく、たくさんの生き物と暮らしていました。作中では、その生き物たちと順番にお別れをしていきます。
 絵本の26ページと27ページでは、でんでん虫やきつね、からすにちょうちょうなど、じいさまの家のまわりに住んでいた生き物たちがみんな集まります。そして、じいさまに「さよなら」をいいます。ペンと水彩で描かれたたくさんの生き物や植物は圧巻です。

▲『ぼんさいじいさま』P26とP27の絵が飾ってある場所


 そして、生き物たちとお別れしたじいさまとひいらぎ少年は、一緒にかぜの向こうに歩き去っていきます。

▲風のむこうに去っていく、ひいらぎ少年とぼんさいじいさま

 上の写真は、ひいらぎ少年とぼんさいじいさまが、風のむこうに消えていく場面です。2人の姿を覆いかくすような、花びらの描写が美しい1枚です。また、右側の裏表紙の原画では、水彩の中にラメのような光沢がちりばめられていて、輝いて見えます。

 ぼんさいじいさまがどうして生き物たちとお別れをしたのか、どこへ向かったのか。はっきりとは言葉にされていませんが、ぼんさいじいさまの背中に、私たちは「生命の終わり」を思い浮かべます。

 しかし、作中のじいさまは常におだやかで、恐怖や苦しみは感じません。生き物たちとのつながり、植物を愛する心、生命の尊さが、このお話にはあふれています。
 作者である木葉井は、幼少期を自然豊かな武蔵野の地で過ごしました。自然を友として育った木葉井は、植物や生き物に親しみと愛情をもっていました。そんな木葉井に感性が、この作品に表れているように思います。

『ぼんさいじいさま』は長らく絶版となっていましたが、2022年に瑞雲舎より復刊されました。

▲『ぼんさいじいさま』(木葉井悦子作、瑞雲舎、2022年)

 木葉井悦子のアトリエ内の閲覧コーナーにご用意していますので、ぜひお手にとって『ぼんさいじいさま』の物語をご堪能いただければ幸いです。
 また、当館のミュージアムショップ「絵本のお店」でも販売しています。展示をご鑑賞いただいたあとは、「絵本のお店」にものいた運んでいただけたらと思います。

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学芸員 畑中