KaruizawaPicturebookMuseum

EXHIBITION

展示案内

2024 春展

マザーグースを楽しむ

ランドルフ・コールデコット画『ヘイ・ディドルディドルとねんねんころりよ Hey Diddle Diddle and Baby Bunting』(1882年頃)

お皿とスプーンは、このあとどうなる?
ちょっと不思議なマザーグースの世界

 「マザーグース」は、多くの場合、イギリスに伝わる伝承童謡を指します。日本でも「ロンドン橋」や「コック・ロビンの死と埋葬」などのマザーグースが有名です。

 この「マザーグース」という言葉は、フランスの作家、シャルル・ペローの伝承童話集『過ぎ去った日の物語や歴史(Histoires ou contes du temps passé)』(1697年)が由来とされています。このペローの童話集に描かれた挿絵のなかに「がちょうおばあさんのお話(Contes de ma mère l’Oye)」という言葉が書かれており、この部分が1729年に出版された英訳版で「マザーグース(Mother Goose)」と訳されました。ペローのお話は、当時パリの貴族の文学サロンで人気を博していましたが、1729年の英訳版もまた好評となりました。こうして「マザーグース」という言葉が広がっていきます。さらにこの頃、イギリスでは伝承童謡をまとめようとする動きが活発になっていました。そして1700年代末に、最初の児童書出版者といわれるロンドンの商人ジョン・ニューベリーが伝承童謡集『マザーグースのメロディー(Mother Goose’s Melody)』を出版し、次第に伝承童謡とマザーグースという言葉が結びつくようになりました。

 マザーグースの集成が作られるようになるとともに、マザーグースを分類しようとする動きも表れてきました。例えば、イギリスの文学研究者であるJ.O.ハリウェルは、『イングランドの伝承童謡集(The Nursery Rhymes of England)』(1842年)のなかで、初めてマザーグースの分類を試みています。『イングランドの伝承童謡集』第5版では、ハリウェルはマザーグースを「なぞなぞ」「積み上げ唄」など18項目に分類しています。このように、マザーグースにはさまざまな種類があります。イギリスの人々はこれらのマザーグースを聞きながら育ち、英語の発音やリズム、ユーモアを育んでいくのです。マザーグースは新聞や小説、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』といった物語の素材にも用いられています。こうしたことから、英語を学ぶ上で、マザーグースはシェイクスピアや聖書と並んで欠かせない要素だとも言われています。さらに、マザーグースにおける不可思議で、突飛にも感じる詩は、多くの画家の関心を引いてきました。マザーグースをどのように描くか、そこに画家それぞれの個性が表れてきます。

 本展では、『不思議の国のアリス』など有名な作品に見られるマザーグースをとりあげながら、イギリスの画家、ランドルフ・コールデコットやケイト・グリーナウェイ、アーサー・ラッカムなど、さまざまな画家たちの描いたマザーグースの挿絵を展示します。画家たちの個性を感じながら、マザーグースの魅力に浸っていただけたら幸いです。

※本展には、一部撮影可能な作品がございます。
 撮影禁止の作品の撮影、SNS等への画像の投稿はご遠慮ください。

【展示作品リスト】
壁面展示リスト(2024.3.7公開)
ケース展示リスト(2024.3.7公開)

  • 会期

    2024039日(土)2024069日(日)

  • 開館時間
    【3月~4月】10:00~16:00
    【5月~6月】9:30~17:00 
    ※4/27(土)~4/30(火)は9:30~17:00
    ※最終入館は閉館の30分前
  • 休館日
    火曜日 ※4月30日はGWのため開館
  • 入場料金

    【軽井沢絵本の森美術館/ピクチャレスク・ガーデン単館の場合】

    大人 1,000円 中高生 700円 小学生 500円 

    【エルツおもちゃ博物館・軽井沢との2館共通セット券の場合】

    大人 1,500円 中高生 1,000円 小学生 700円 

※小学生未満無料

※小学生以下のご入館には保護者の同伴が必要です

※障がい者割引あり

2024 夏展

北陸新幹線 福井延伸記念特別展 かこさとし 絵本への「まなざし」

©️1973 Kako Research Institute Ltd. 『からすのパンやさん』(偕成社)より

はたらく人へ 子どもたちへ
かこさとしのまなざしがこめられた絵本

  東京~軽井沢~金沢までを結んでいた北陸新幹線が、このたび福井県の敦賀まで延伸しました。これを記念し、昨年より軽井沢町と福井県は連携を行ってまいりました。その一環として、軽井沢絵本の森美術館では、福井県出身の絵本画家「かこさとし」の特別展を開催いたします。

 かこさとし(加古里子、1926-2018)は、福井県武生市(現:越前市)に生まれました。東京大学工学部を卒業後、会社勤務をしながらセツルメント活動(工場労働者が多く住む地域でのボランティア活動)を始めます。その一環として、子どもたちに手作り紙芝居や絵本を作り、これが後の絵本作品につながります。そして1959年に福音館書店より『だむのおじさんたち』(現在は復刊ドットコム)を刊行し、絵本作家としてデビューしました。

  かこさとしの絵本には、自身の経験や洞察が込められています。特に大きいのが戦争経験です。戦争を経て、かこさとしは「自分に何ができるのか」追求するようになります。その中で彼が見ていたのは、自国を復興させようと立ち上がる人々、彼らが築き上げていく町の姿でした。こうした光景が、かこさとしの創作の原点となります。そして「子どもたちが自分の先生」と語るように、子どもたちの反応を見ながら、彼らの探求心を引き出すような紙芝居、そして絵本を作っていったのです。

  たとえば代表作『からすのパンやさん』(偕成社、1973年)は、ロシアのモイセーエフ舞踊団の組曲「パルチザン」に着想を得ています。「パルチザン」は、戦いに身を投じる民族をテーマにした内容ですが、かこさとしは「そこに登場する兵士・農民・労働者・老若男女の一人ひとりの人物描写」に心打たれ、この学びをからすたちに試みたといいます。また、同作は続編『からすのおかしやさん』『からすのやおやさん』『からすのてんぷらやさん』『からすのそばやさん』(いずれも偕成社、2013年)も出版されました。懸命に生きる人々の姿が、本シリーズのからす一羽一羽の表情を生き生きとさせているのです。

  また、代表作『だるまちゃんとかみなりちゃん』(福音館書店、1968年)では、「雲車(ウンカー)・雷車(ライカー)」があちこちを走り、「配膳移送機」がごちそうを運んでくれる、非常に近未来的なかみなりちゃんの町が登場します。見開きいっぱいに描かれたこの場面からは、「私たちの世界も、いつかこんな風になるのかな」と、期待がわいてきます。同時に、かみなりちゃんの町の住人の姿を通して、科学技術を発展させてきた人々の力を感じ取ることができるのです。

「はたらく人々」の思いや力を、長きに渡ってこどもたちに伝えてきた、かこさとしの絵本。作者の「まなざし」とともに、お楽しみいただけたら幸いです。

※本展は撮影禁止となっております。

【展示作品リスト】

公開までしばらくお待ちください。

【イベント】

越前市かこさとしふるさと絵本館「石石」×軽井沢絵本の森美術館 連携スタンプラリー
軽井沢絵本の森美術館と、越前市かこさとしふるさと絵本館「石石(らく)」が連携します。期間中、2館でスタンプを押した方に「からすのパンやさん」のイラストカードをプレゼントします!

期間
2024年6月14日(金)~2024年10月14(月) 各施設の開館時間内
※上記期間を過ぎてのスタンプの押印・特典の引き換えはできませんので、ご注意ください。

参加方法
・スタンプラリー台紙を、軽井沢絵本の森美術館または 越前市かこさとしふるさと絵本館「石石(らく)」 にて、お受け取りください。
※軽井沢絵本の森美術館では、台紙にスタンプが押してあります。「石石(らく)」では、館内の所定の場所でスタンプを押してください。
・期間中にもう一方の館へ来館し、台紙に二つのスタンプがそろったら、各館の入館受付で台紙をご提示ください。特典をお渡しします。

注意事項
・スタンプラリーの台紙には限りがあるため、会期の途中で配布を終了する場合がございます。
・特典のお渡しは、台紙1枚につき、1点のお渡しとなります。
・台紙は1名さまにつき1枚まで有効です。特典の受け取りは、台紙をお持ちの本人のみ可能となります。

越前市かこさとしふるさと絵本館「石石(らく)」
開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
会期中の休館日:毎週火曜日、国民の祝日の翌平日、展示替えに伴う臨時休館(会期中は9月4日、5日)
入館料:無料
リンク:ホームページInstagram

  • 会期

    20240614日(金)20241014日(月)

  • 開館時間
    9:30~17:00
    ※最終入館は閉館の30分前
  • 休館日
    火曜日 
    ※7~9月は無休
  • 入場料金

    【軽井沢絵本の森美術館/ピクチャレスク・ガーデン単館の場合】

    大人 1,000円 中高生 700円 小学生 500円 

    【エルツおもちゃ博物館・軽井沢との2館共通セット券の場合】

    大人 1,500円 中高生 1,000円 小学生 700円 

※小学生未満無料

※小学生以下のご入館には保護者の同伴が必要です

※障がい者割引あり

常設展示のご案内

ピーターラビットのひみつをさぐろう!!

ピーターラビット™のひみつの部屋(第3展示館)

ビアトリクス・ポターの生誕150周年となる2016年に、ピーターラビットシリーズを紹介するコーナーを常設いたしました。本展では、日本におけるビアトリクス研究の第一人者である「吉田新一」氏(英米児童文学研究者、当館名誉顧問)監修の元、作品世界を深く読み解きながら、お話に込められた「ひみつ」に迫ります。

ピーターラビット™のひみつの部屋

吉田新一文庫(第1展示館)

第1展示室に隣接している「吉田新一文庫」は、当館の名誉顧問でもあり英米児童文学研究者の吉田新一氏の資料をご紹介しています。貴重な原書などの資料があり、学生や研究者の方にもご利用いただいています。

吉田新一文庫

欧米絵本のあゆみ(第1展示館)

欧米絵本の初期から現代まで続く魅力を様々な切り口で紹介しています。

欧米絵本のあゆみ

木葉井悦子のアトリエ(第1展示館)

木葉井悦子(1937―1995)は、東京・小金井出身の画家です。初の絵本である『あかいめのしろへび』をはじめ、『みずまき』や『ぼんさいじいさま』など、生涯で17冊の絵本を制作しました。武蔵野の原生林の残る地域で育った彼女の絵本には、豊かな自然やいきいきとした動物たちが多く登場します。また数年暮らしたアフリカの地での経験や仏教思想なども、作品の中に落とし込まれています。「木葉井悦子のアトリエ」では、ご遺族の意向により当館に寄贈された木葉井の原画作品を、その生涯と共にご紹介しています。

木葉井悦子のアトリエ